恋も、空芋

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「せんせー! すごく大きい!」

子供たちの声が秋空の下に響いた。今日は待ちに待った恋芋(こいも)ほりの日。子供たちは一生懸命、畑に埋まっている自分の恋芋を探していた。

「さっちゃんのおいもはきれー! 星の形だ」
「ゆうくんのは、カレーの匂いがする!」

恋芋は植えた人の心を写す。心をいっぱいにした、大好きなイメージが色や形に現れやすい。

周りのお友達とは対照的に、一人の男の子が見つけることができず、泣きそうな顔をしていた。りょうくんだ。私は隣に座った。

「任せなさい!」

私はショベルカーのように周辺の土を掘りおこした。

「あ!」

泥だらけのりょうくんが持ち上げた恋芋は澄みきった青色だ。頭上の空と重なると、表面の皮にうろこ雲が流れた。

「せんせー、だいすき!」

その後はみんなのお楽しみ、焼き芋だ。
新聞紙で包んだりょうくんの空芋は、茜色の光が皮から溢れていた。
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公開:23/03/06 20:55

イチフジ( 地球 )

マイペースに書いてきます。
感想いただけると嬉しいです。

100 サクラ

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