恋

バレンタイン翌日、意中の彼に渡せなかった手作りチョコを私は自分で食べていた。
昨日、渡そう渡そうと思い、机の中に潜ませ、ずっと機会を伺っていた。
気が付けば放課後で、彼はもう帰った後だった。
終わった…落ち込んだ気持ちのまま鞄だけを持って帰路につく。チョコは机の中だ。そうして今に至る。
２日前はあんなに美味しく出来たと思ったのに今はとても味気ない…
はぁ…とため息を吐いていたら手に持ったチョコを何者かに奪われた。
顔を上げると彼が私のチョコを口に放り込んでいた。
「なんだ。美味しいじゃないか。不味そうに食べていたから失敗作かと思ったぞ」
ぺろりと指を舐める彼。
「これ、手作りチョコだろ？誰に渡すつもりだったんだ？」
君だよ。とは、とても言えない。
「…まあいいや。ホワイトデー。ちゃんと返すから楽しみに待ってろよ」

この時私は、ホワイトデーに彼から告白されるとは夢にも思っていませんでした。