世界一周遠回り
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あ、と気づいた時にはタクシーが泡を吐いていた。
ライトでちらちら光る鱗。まんまるの眼はスローモーションで車体を映し、すぐに後ろへ去っていく。
言うべきか、けれどもう遅いだろうか。シートに預けていた背を起こして運転席をこっそり伺う。間違えるのもどうかと思うが、ぼうっとしていた私も悪い。
悩んでいるうちに流れが速度を落として、エンジンがぶぶぶと音を立てた。
「どうぞ、鯨の前です」
「……ありがとうございます」
のっぺりした黒が一面に広がる。振り返った笑顔に「くじら違いだ」とは告げられず、私は料金を払って海の中へと踏み出した。
すみません。遠い瞳に頭を下げると、ゆるりとかぶりを振った尾ひれが広大な背中へ案内してくれる。
腰を落ち着けると水が動き出して、下から伝わる呼吸の優しさに思わず鼻をすすった。まあ、たまにはいいか。息をつくと隣の蛸がもぞ、と寄ってきて、旅の醍醐味に私は笑った。
ライトでちらちら光る鱗。まんまるの眼はスローモーションで車体を映し、すぐに後ろへ去っていく。
言うべきか、けれどもう遅いだろうか。シートに預けていた背を起こして運転席をこっそり伺う。間違えるのもどうかと思うが、ぼうっとしていた私も悪い。
悩んでいるうちに流れが速度を落として、エンジンがぶぶぶと音を立てた。
「どうぞ、鯨の前です」
「……ありがとうございます」
のっぺりした黒が一面に広がる。振り返った笑顔に「くじら違いだ」とは告げられず、私は料金を払って海の中へと踏み出した。
すみません。遠い瞳に頭を下げると、ゆるりとかぶりを振った尾ひれが広大な背中へ案内してくれる。
腰を落ち着けると水が動き出して、下から伝わる呼吸の優しさに思わず鼻をすすった。まあ、たまにはいいか。息をつくと隣の蛸がもぞ、と寄ってきて、旅の醍醐味に私は笑った。
ファンタジー
公開:23/03/08 22:45
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