凡人の2度目

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おや、と思ったのは、職場に出てきてからだった。
カレンダーの日付が一週間戻っている。
誰かの悪ふざけかと疑ったが、日めくりカレンダーをわざわざ戻す変人もそういるまい。
仕事の内容も、記憶にあるものと全く同じだった。
成程、私はもしかしたら一週間のタイムリープしたのかもしれない。
なればこそ、完璧に立ち振る舞って見せよう。何せ未来に起こる出来事が全て分かるのだ。
あの時こうすれば良かったという後悔は、完全に掻き消えた。
二度目というのは、想像以上に良いものだ。
どうしてタイムリープをしたのかは分からないが、是非とももう一度経験したい。
しかし、同じ現象はそれ以降ただの一度も起こらなかった。
私は今でも思うのだ。
あの一週間を、ただ完璧に過ごすのではなく、もっと有意義に使っていたのなら。
一週間の間の後悔は消えたが、それに変わる後悔は残った。
己が平凡さを呪っても、時はもう戻らない。
公開:23/03/05 10:45

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