星の夜の旅

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 ぼくは怒っているんだ。
 パパとママは最近ぼくのことを全然かまってくれない。
 ママとヒーローごっこをしようとすると「おとなしくしてなさい!」って怒るし、パパはママの味方ばかりしてぼくのことを一緒になって怒る。ぼくの大好きな唐揚げも作ってくれない。
 だから、ぼくはひとりで旅に出ることにした。「じりつ」ってやつだよ。もうすぐ小学生になるんだから、ひとり旅くらいできるんだからね。
 パパとママにもすごいねって、きっと褒めてもらえる。
 夜空の星を見上げていたら、突然後ろから車が大きな音を立てて走り去っていった。
 周りがしーんとして、何だか急に怖くなった。その時、遠くからぼくを呼ぶ声が聞こえた。
「ママー!」
 ぼくはママに抱きつく。ママは、怒らなかった。
 パパとママと3人で手を繋いで帰る。
「今度は家族4人で旅しようね。秋には駿はお兄ちゃんになるから、弟妹のことちゃんと守ってあげてね」
その他
公開:23/03/04 09:00
更新:23/03/04 11:53

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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