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今回の旅もまた、突然に始まった。
ゆらゆらと穏やかな往路を共に進む。
柔らかな手に包まれながら、旅はゆっくりと幕を開けた。
ゆったりと歩み、ときどき休む。
そうそう、それでいい。旅ってのはこうでなくっちゃ。
猶予はたっぷりとある。
正面の少女からは息を飲む音や、鈴を転がすような笑い声が聞こえてきた。
歩み進めるにつれて、だんだんと速度が上がっていくのを感じる。
いつの間にか迎えた旅の終盤には雨が降ってきて、この身をしっとりと濡らした。
しかし、その雨はあたたかく心地よい。
やがて晴れ晴れとした顔になった少女は、私を丁寧に送り届けてくれた。
やれやれ、いい旅だった。
私はまた、暗く少しかびくさい木造の部屋へと戻っていく。また眠りにつくのだ。
しばらくして、ピッ、と赤い光が私の体を揺り起こした。
次の旅への合図だ。
「返却日は今月の二十日です」
旅先の青年は、司書から大事そうに私を受け取った。
ゆらゆらと穏やかな往路を共に進む。
柔らかな手に包まれながら、旅はゆっくりと幕を開けた。
ゆったりと歩み、ときどき休む。
そうそう、それでいい。旅ってのはこうでなくっちゃ。
猶予はたっぷりとある。
正面の少女からは息を飲む音や、鈴を転がすような笑い声が聞こえてきた。
歩み進めるにつれて、だんだんと速度が上がっていくのを感じる。
いつの間にか迎えた旅の終盤には雨が降ってきて、この身をしっとりと濡らした。
しかし、その雨はあたたかく心地よい。
やがて晴れ晴れとした顔になった少女は、私を丁寧に送り届けてくれた。
やれやれ、いい旅だった。
私はまた、暗く少しかびくさい木造の部屋へと戻っていく。また眠りにつくのだ。
しばらくして、ピッ、と赤い光が私の体を揺り起こした。
次の旅への合図だ。
「返却日は今月の二十日です」
旅先の青年は、司書から大事そうに私を受け取った。
その他
公開:23/03/02 00:32
更新:23/03/02 10:59
更新:23/03/02 10:59
著作『空色ネイル』第19回坊っちゃん文学賞佳作受賞。
心のきらめきを書き留めます。
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