仕事欠乏症

仕事欠乏症の研究者である私は、この症状を誘発させる薬を開発した。
この薬を吸い込めば、身体が仕事を求める。仕事をしなければ、最悪死に至る。
だが危険な薬ではない。その証拠に、私は薬を生まれたばかりの我が子に吸わせてみた。
身体が仕事を求めているのだろう。赤子の瞼はトロンと落ち、すやすやと眠り始めた。
…よしよし。眠りは赤ちゃんにとって大切な仕事だ。薬が効いている証拠である。
私を尊敬し、勉強ばかりしている長男にも薬を吸わせてみた。
すると長男、私に薬を吸わせ、外に連れ出したではないか。
「父さん！子どもは遊ぶ事も仕事です！そして父親は子どもの遊びに付き合う事も仕事です！」
…確かにその通りだ。研究室に籠っているばかりが仕事ではない。
私は息子と思う存分遊んだ。
後になって思ったが、リフレッシュや気分転換も私にとっては大事な仕事だった。
長男は私の仕事が行き詰っているのをよく見ていたんだな。