舞い散る桜

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 あなたと出会うために、ずっと旅をしてきた。
 いろんな人間になったわ。子ども、大人、従姉妹、先生。
 ヒトじゃない時もあった。仔犬、蝶々、葉擦れの音であなたの耳に入り込んだことも、細雨になってあなたの髪を濡らしたこともあった。
「何度生まれ変わっても、何度でも君を見つける」
 あなたがそう約束してくれたから、何度生まれ変わってもあなたと出会えた。
 だけど、もう私達、新しい旅に出る時が来たんだね。
 どうか、散ってゆく私を覚えていて。
 愛している、叫ぶように祈るように、降っていくから。この想いごとあなたの上に。
 私は確かにあなたを、愛してた。
 
 花見に行った帰り道、揺れる電車の中、夕暮れの車内に影が落ちる。
 自分の肩に頭を乗せて眠る少女を、青年は愛おしそうに見つめている。
 眠る少女の瞼の上に、桜の花びらが一枚乗っていた。
「ごめんな」
 青年はその花びらに、そっとキスをした。
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公開:23/03/03 11:52

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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