変温動物

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「これを食べるのかね」と教授は若手研究者に聞いた。目の前の水槽では、トカゲが生ごみを奪い合っている。
「ワニは一週間に一回程度の給餌でも平気な理由をご存じですか?」
「ああ」と教授はうなずく。
「牛などの恒温動物は摂取したエネルギーのほとんどを体温維持のために浪費する。対してワニなどの変温動物は体温維持の必要がないからではないかね」
「そのとおりです。成長に回せるエネルギーを率にすると、恒温動物が3%に対して、変温動物は20%にもなります。7倍も効率的です」
「しかしなあ」
教授はうごめくトカゲを眺めた。
ベルが鳴った。若手研究者は時計を見た。
「もう休憩時間のようですね。人類の進化とはいえ、面倒なものです」
「これだけ人口が増えたら仕方がないだろ。これが人類が生き残る唯一の道なのだから」
そう言って、教授と若手研究者は体温維持のため日光浴へと向かった。
SF
公開:23/03/03 09:48

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