本の旅
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俺は人気ミステリー作家のハードカバーだ。
気がついた時にはもう図書館にいたが、そりゃあ、ひっきりなしに貸し出された。
いろんな家に行った。小さい家、大きい家、背の高いマンション、そうそう、ログハウスなんていうのもあった。帰省の学生に連れられて、北海道に行ったこともある。
ただ、いつのまにか、俺の人気は落ちてしまった。新しい本はどんどん出てくるから仕方ない。
とうとう、除籍本になってしまった。
他の本たちと一緒に段ボールに詰められ、無料でどうぞと並べられる。隣の本が引き取られていくのを見送る気持ちときたら。あー、俺もここで終わりか。再生され、真っ白な紙に生まれ変わる時が来たのか。
「あ、懐かしい」
俺を手に取ったのは女性だった。
「私が作家を目指したきっかけなんだ」
連れの男性に言うと、俺をしっかりと鞄の中に収めた。
気がついた時にはもう図書館にいたが、そりゃあ、ひっきりなしに貸し出された。
いろんな家に行った。小さい家、大きい家、背の高いマンション、そうそう、ログハウスなんていうのもあった。帰省の学生に連れられて、北海道に行ったこともある。
ただ、いつのまにか、俺の人気は落ちてしまった。新しい本はどんどん出てくるから仕方ない。
とうとう、除籍本になってしまった。
他の本たちと一緒に段ボールに詰められ、無料でどうぞと並べられる。隣の本が引き取られていくのを見送る気持ちときたら。あー、俺もここで終わりか。再生され、真っ白な紙に生まれ変わる時が来たのか。
「あ、懐かしい」
俺を手に取ったのは女性だった。
「私が作家を目指したきっかけなんだ」
連れの男性に言うと、俺をしっかりと鞄の中に収めた。
ファンタジー
公開:23/03/02 23:52
更新:23/03/03 00:39
更新:23/03/03 00:39
名作絵画ショートショートコンテストで「復元師」が太田忠司賞を受賞しました。
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「ショートショートの花束」8と9にものっていますので、よろしく。
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