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旅館カンタビレ名物の一つ、音泉。音の泉と書くこの温泉は、いっけんただの温泉だけど、少し趣が違う。小さな風呂オケを目の前に浮かべると、オケがその人の旅の記憶の音を奏でだす。初めて訪れる街の喧騒や、心地よく身を揺らす電車の音。郷土料理の鍋が煮える音も聞こえてきた。音泉に浸かる人はぞれぞれに、笑う人もいれば、時には泣き出す人もいた。
風呂オケの音が重なり合って、一つの大きなオーケストラになるころには、宴会場から女将のピアノが聞こえてきた。夕飯の用意ができたみたい。皆顔を見合わせて、嬉しそうに音泉から上がっていく。もう一つの名物「オケ盛りづくし」は、今晩どんな名演をするだろう。
「お猿さん、バイバイ」
そう言って手を振る男の子に笑い返す。私の出番も近い。なにしろこの旅館で一番の名物が、私のバイオリンなんだから。今宵もお客様たちと一緒に、素敵な旅に奏でよう。旅は歌うように。ようこそ旅館カンタビレへ!
風呂オケの音が重なり合って、一つの大きなオーケストラになるころには、宴会場から女将のピアノが聞こえてきた。夕飯の用意ができたみたい。皆顔を見合わせて、嬉しそうに音泉から上がっていく。もう一つの名物「オケ盛りづくし」は、今晩どんな名演をするだろう。
「お猿さん、バイバイ」
そう言って手を振る男の子に笑い返す。私の出番も近い。なにしろこの旅館で一番の名物が、私のバイオリンなんだから。今宵もお客様たちと一緒に、素敵な旅に奏でよう。旅は歌うように。ようこそ旅館カンタビレへ!
その他
公開:23/03/02 13:29
旅
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