補助輪が外れたら
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「ママー! はまっちゃったあ」
補助輪付きの自転車にまたがって叫ぶ娘に見えない様に笑う。
「はいはい」
「もう一回、行ってくる!」
冷たい風で赤くなった小さな手が、ぎゅっとハンドルを握った。
公園の歩道をガラガラと音を立てて自転車は進む。凸凹道も冷たい向かい風も何のその。初めて自転車に乗った時の目の輝きもそのままだ。
「ママー! 一緒に乗って!」
「一緒に?」
「バスの運転手さんなの!」
「なるほど」
「出発しまーす!」
滑り台の前、バスケットゴールの前、ベンチの前と所々で止まった。
公園の出口に向かう坂で「頑張れ!」と声をかけてくれた女性に、娘は少し驚いた顔をした。
「応援してくれたね」
「そっか!」
「運転手さん、お家まで安全にお願いしますね」
「青信号、渡りまーす」
補助輪が外れた自転車のペダルを力強く踏み込む娘の背中を想像して、ほんの少しの寂しさとそれ以上の喜びを噛み締めた。
補助輪付きの自転車にまたがって叫ぶ娘に見えない様に笑う。
「はいはい」
「もう一回、行ってくる!」
冷たい風で赤くなった小さな手が、ぎゅっとハンドルを握った。
公園の歩道をガラガラと音を立てて自転車は進む。凸凹道も冷たい向かい風も何のその。初めて自転車に乗った時の目の輝きもそのままだ。
「ママー! 一緒に乗って!」
「一緒に?」
「バスの運転手さんなの!」
「なるほど」
「出発しまーす!」
滑り台の前、バスケットゴールの前、ベンチの前と所々で止まった。
公園の出口に向かう坂で「頑張れ!」と声をかけてくれた女性に、娘は少し驚いた顔をした。
「応援してくれたね」
「そっか!」
「運転手さん、お家まで安全にお願いしますね」
「青信号、渡りまーす」
補助輪が外れた自転車のペダルを力強く踏み込む娘の背中を想像して、ほんの少しの寂しさとそれ以上の喜びを噛み締めた。
青春
公開:23/03/02 11:27
プチコン
旅
自転車
射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。
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