プライド

8
3

キッチンカウンターの上に缶飲料が乗っていた。
【宇治抹茶入り珈琲風味のココア】と書かれている。

「どうしたの、これ。買ったの?」妻に問う。
「スーパーで新商品ですって配ってたから貰ったの」
へ~。味を想像しようとするが、全く浮かばない。結局その日は二人とも手を付けなかった。

夜中、トイレに起きるとキッチンで声がする。泥棒か?何か言い争っている。
「なんやの、その態度。うちは誰もが知る京都の宇治抹茶やで」
「それが何か?俺は世界中でありがたがられるブルーマウンテンだ。レベルが違うわ」
「ふっ。何処ででも手に入る奴らが偉そうに。私は希少価値の高い、日本産カカオから作られたココアだ」

翌朝キッチンに行くと、缶のプルタブが開いている。その横に、抹茶入りの湯呑みと珈琲の入ったデミタスカップがあった。缶の中にはココアが残っていた。

「おはよう。あ、ココアだ」妻は缶を持つと嬉しそうに飲み干した。
その他
公開:23/02/24 15:11

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容