限られた食料

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洞窟に閉じ込められて唯一生き残った男は、蜂の子を爪楊枝で刺した。まだ生きている幼虫だ。
「あのときは大変だったなあ」
と、幼虫を咀嚼しながら、目の前にいる女性記者にそのときの話を始めた。
探検の途中で崩落が起き、男女四人が置き去りとなった。
呼吸はできたが、なにせ食料がない。洞窟にすむ生物はいないし、手持ちのリュック内にある食料はすぐに尽きた。体力のないものから、命を落としていく。
目の前に遺体がある。生き残った人間は腹が減る。生命を維持するにはエネルギーが必要だ。
こうなると、オレが何を食べて生き残ったかわかるだろ?
もちろん最初は躊躇したさ。だが、食べ始めるとほのかに甘みがある。食感も悪くない。だから、いまでも食べたいと思うし、実際に手を出したこともある。
男はそう言うと、奇怪な笑みを浮かべた。女性記者が凍り付く。男の喉がなる。
「あれは旨かったなあ。死体にたかるウジ虫は」
その他
公開:23/02/22 09:14

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