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彼女の手が僕の手に触れた。
「ご、ごめん」
「こちらこそ、ごめんなさい」
二人とも顔を真っ赤にして謝った。
付き合いだしてから2か月、僕達は一向に進展していない。
本来であれば下の名前を呼び合っているとか二人しか分からない恥ずかしい名前を付けている頃だと思う。
なぜ、そうなっていないのか。
理由は、はっきりしている。
それは彼女の父親がどこまでもついて来るからである。
「あの~、お父さん」
「君にお父さんと呼ばれる筋合いはない」
「ですが、彼女も困っていると思いますし」
「そうなのか、娘よ」
「いえ、大丈夫ですわ。私は困っていませんから」
「あっ、そうですか。そうですよね。ははは」
毎回、こんな感じである。
とある日、二人で歩いていると屋根の瓦が僕らの上に落ちて来た。
「あっ、危ない。・・大丈夫ですか。怪我はありませんか」
「すみません」
ドキッ
僕はこの時、彼女の父親に恋の予感を感じた。
公開:23/02/21 15:39
更新:23/02/21 15:48

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