この世界に夜を取り戻したい

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もう夜は来ない。
そんな突拍子もない事実を突きつけられたのは、夜が来なくなって三日目の事だった。だから信じるしかない。もう夜は来ないのだ。夜が来ないと言った彼は、自身を夕焼けの使者と名乗った。朝と昼、夕焼けは来るが夜は来ない。彼はそう言った。
「どうして夜が来ないの?」
「夜は恥ずかしがり屋さんだからね。ちょっと失敗したことがあって、表に出たくないんだよ」
夕焼けの使者はそう話す。
「じゃあどうすれば会えるの?」
「それはわからないなぁ……でも、いつか会えたらいいよね」
「うん!」
私達は笑った。その時はただ純粋に笑うことが出来たんだ。そして私は願うようになった。夜にもう一度会いたいと。けれど、願いは決して叶わない。だってその日からずっと、私の時間は止まったままなのだから。
『おやすみなさい』
『また明日』
そんな言葉が嫌いになった。
神様、どうかこの世界に再び夜を。
公開:23/02/17 09:05

富本アキユ( 日本 )

カクヨムにも小説を投稿してます。
Twitterは@book_Akiyu

・SSG投稿作品1500作品突破

・作詞を担当
https://youtu.be/OtczLkK6-8c

・葉月のりこ様YouTubeチャンネル『ショートショート朗読ボックス』~ショートショートガーデンより~の動画内で江頭楓様より『睡眠旅人』を朗読して頂きました。

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ブラウン・シュガー
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