死贄

私の住む村では生贄ならぬ死贄を神へと捧げております。
死贄とは損傷の少ない遺体です。
死ぬ事を仏になる、なんて表現しますよね。
「美しく死んだ者は神様に見初められた証拠だ」と言われております。
私もそうして、神様に見初められた一人です。
私は確かに死にました。でもこの世に戻ってきました。
私に合いそうな遺体が先日、死贄として捧げられました。
私はその身体を貰いました。
仏となった私もいわば神様。私にも誰かを見初める権利があるのです。
戻ってきた私を両親は喜んで受け入れてくれました。
久しぶりに会った両親は生前の私が知る両親と違っていました。
見た目は記憶と同じです。ただ、中身が違うと言うのでしょうか…どうにも違和感を覚えてしまいます。
両親の首を見れば、紐で絞められたような痣がありました。
ああ…両親も死贄に使われたんですね。
複雑な感情を抱く私を村は「感動の再会だ」と喜んでくれました。