焼きたてですよ

建築学科に在籍する私は先生から「燃えやすい家を建てなさい」と課題を出された。
聞けば映画のセットで使うものらしい。今の家は燃えにくい構造になっているから、映画で壊すのはもっぱら建築学科の作品の数々だそうだ。
自分達が建てた家が映画に出る！それは学生としては嬉しいお誘いだ。
たとえ燃やす目的とはいえ、それが多くの人の目に触れるのだから。
燃えやすい家なんて、手を抜いた家を建てればいいだろう。そんな風に思っていた。
だが実際に家を建て始めると燃えやすい家には違和感がある。こんな家、絶対に住みたいと思わない。私達は日常的に燃えにくい構造の家に住んでいる事を理解させられた。
燃えやすい家とは、家の燃えにくい構造をよく理解していないと建てられない。思った以上に困難だった。
そうして建てた家が映画で燃やされる。それを見ては絶対に燃えない家を建てようと誰もが誓う。
焼かされた手を力いっぱい握りながら。