忍び寿司

8
5

店内は一見普通の回転寿司屋のようだ。『スシ食いねェ!』の曲が流れている。
空いているテーブル席に座るが、店員の気配はない。
すると、どこからともなく「へい、らっしゃい!」と言う声がして、手裏剣のようなものが複数飛んできてテーブルの所定の位置にお手拭きタオル、あがり、箸、醤油さし、ガリ箱が置かれた。
そして「テーブルにある竹の筒から注文するでござる」と言う声がする。
巻き物のようなお品書きを開くと、メニューが墨で記されていた。
竹の筒に向かって「穴子」と頼むと、「へい、お待ち!」と言う声とともに手裏剣のように注文の品が飛んできた。見事な技、いや握りだ。
食べ終わってレジへ向かうと、ようやく店員が伝票を持って姿を現した。予想どおり忍者の格好をしている。
会計をしながら「レーンは必要ないのでは?」と尋ねると、店員から「店内で狼藉を働いたくせ者を乗せて護送するために必要でござる」と即答があった。
その他
公開:23/02/18 07:13
回転寿司 テーブル 手裏剣 あがり 醤油 ガリ 握り 忍者 レーン

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容