バレンタインの勇気

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──今日こそ、勇気を出すんだ。

美羽は将也──元カレの高校の前で彼が出てくるのを待っていた。
何度も元カレの周囲をウロウロするこの状況。

──いいかげんにしないと不審者だと思われる。

寄りが戻らなくとも、これだけは何とかしたい。

バレンタイン。今日なら逢いに来ても不自然じゃない。

──勇気を出すんだ!

「まさ――」
「将也くん。はいこれ」

その時、美羽の横をすり抜け、他校の女生徒が将也にチョコを渡した。

「わぁ。ありがとう」
「これからもヨロシクね」
「こちらこそ!」

今カノと共に弾ける将也の笑顔を見て、美羽の勇気は急に萎んでしまった。

将也は女癖が悪かった。
浮気が原因で別れたというのに、今も美羽の心の中で大きな位置をしめている。

──しょうがない。バレンタインに免じて今日は許してあげる。

そういう美羽の両手には鞄から取り出したナイフがしっかり握られていた。
その他
公開:23/02/11 18:09

椿あやか( 猫町。 )

【椿あやか】(旧PN:AYAKA) 
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◆第18回坊っちゃん文学賞大賞受賞
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【note】400字以上の作品や日常報告など
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