焼きたてですよ

友人に恋人が出来た。それは別にいい。他人の色恋沙汰に口を出すつもりはない。
私が許せないのは恋人が出来てから友人が部活に顔を出さなくなった事だ。
今度の絵画コンクール、本気で入賞を目指していたんじゃないのか？友人の変わり身にイライラする。
今日も一人、放課後の美術室でコンクールの絵を描く私。
突然、ドアが開いたかと思うと友人がやってきた。そして、一心不乱に筆を振るう。
凄い…色鮮やかな風景が私の目と心を掴んで離さなかった。
「恋人と一緒の時間を過ごして、見える世界が変わったんだ。今の私には世界がこう見える。中でも特に美しいと思った瞬間を、さっきこの目に焼き付けてきた」
友人は絵への情熱を失っていなかった。むしろその燃え盛る炎を見せつけてきた。
負けてられない…私も一心不乱に筆を振るう。
己が内にある友人へのライバル心を燃やし、友人には見えない世界を表現する。
私の絵を見た友人が息を飲んだ。