焼きたてですよ

暑い夏、仕事から帰って来ると妻が僕の顔を見て驚いた。
「あなたどうしたの！顔真っ赤じゃない！熱中症！？なら早く冷やさないと」
焦る妻を僕は宥める。大丈夫。今日の現場はちょっと照り返しが強かったんだ。それで肌が焼けたんだろう。
実際今、肌がピリピリする。仕事帰り、冷房の効いた車で帰ってもこの状態だ。むしろ体を冷やし過ぎて今は少し寒いくらいである。
そんな焼き立ての僕の顔に妻はクリームを塗ってくれる。
「これで少しは良くなるわ。あと日焼け止め使った方がいいわよ」
面倒臭いなぁ…君が毎朝僕の顔に塗ってくれるのなら使うよ。
妻はため息を吐くと「分かった。明日から毎朝塗ってあげるわ」と言った。

翌朝、本当に僕の顔に日焼け止めを塗ってくれる妻。
すべすべした手。僕の顔を覗き込む瞳。思わず照れてしまう。
「あれ？パパなんでお顔赤いの？」と、子どもに聞かれた。
僕は咄嗟に「焼きたてですから」と答えた。