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僕が「手を触れてもいい」と聞くと彼女は無言だった。
でも、よく見てみると恥ずかしいのか、彼女の顔は赤く染まっていた。
続けて僕が「明日、引っ越すことになったんだ」と神妙な面持ちで言うと彼女は急に青い顔に変わった。
一方、その様子を固唾を飲んで見ていた周囲の者は「君は何をやっているんだ。よく見てみろよ。ゴーサインがでているだろ」だとか「早くいっちゃいなよ」とヤジを飛ばした。
僕は周囲の人に「すみません。すみません。ご迷惑をかけてすいません。すぐに済みますので」と謝罪する。
不意に強い風が吹いた。
そのせいで僕の足元がぐらぐらと揺らぐ。
彼女を見ると警戒感を示す様に黄色い顔をしていた。
僕は「ごめん、心配させたね。でも、ほら、大丈夫だから」と彼女にアピールする。
「実は君に今まで隠していたんだけど父が倒れたんだ。だから実家に帰って稼業を継ぐことになったんだ。だからゴメン」
彼女は黙っていた。
公開:23/02/13 18:59

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