カレーのルーツーリング

「カレーのルーツを巡る旅に出かけよう」
友人が古臭いレトルトカレーを鍋で温め、封を切る。中からレトロな車が飛び出した。
「レトロトカーだ。さ、乗った乗った」
車の中に漂う加齢臭。お互い歳を取った。シャバシャバいカレーよりレトロトロなカレーを好むようになった。
思い出と具材がたっぷり詰まった袋小路。ボンボンなんて言わせない。我ながらスパイシーな人生を送って来たものだ。
友人と一つのレトルトカレーを分けて食べていた頃が懐かしい。窓の外にはそんな若い自分達の姿。
そう、あれはまだ一皮むけていなかった芋坊主だった自分達の出発点。
レトルトカレーの開発主任となって数十年。もう作るものはないと思ったが原点に立ち返ると新たな発見もある。引き返す事でカレーなる未知が見つかった。
自分達のルーツを巡った１日。本当なら酒でも飲んで話し合いたいが、我が家からカレーのニオイが漂うものだからそれはまた今度にしよう。