時給０円

<求人募集。時給０円>

こんな求人広告が貼ってあった。当然誰も来るわけがないだろう。だが僕は、タダ働きでどんな仕事をさせられるのだろうという好奇心に負けてしまい、一日だけ体験してみることにした。そこは農家だった。野菜を作る仕事だった。高齢者しかおらず、人手が足りない。しかし人を雇う資金の余裕もなかった。だからダメ元でこんな求人を出したらしい。お年寄りばかりで大変だ。僕は一日ボランティアのつもりで、一生懸命働いた。重い物を沢山持った。そして一日が終わると、お爺さんが声をかけてきた。
「ありがとう。本当にありがとう」
「ありがとうね」
年寄り達は、とても感謝してくれた。それから僕は、年寄り達との縁ができた。皆に孫のように可愛がられた。僕も本当の祖父や祖母のように、皆に接していった。
「ごめんな。給料出してやりたいんだがな」
「ああ、時給０円の事？報酬なら十分頂いたよ。人の縁っていうね」