焼きたてですよ

「金に困ったらこれを使え」
鍛冶師の師匠が槌を一本、渡してきた。
使い込まれたボロボロの槌。価値があるようには見えない。
だが槌とは鍛冶師の腕の一部。槌を渡すという事は、困ったことがあれば腕を貸してやる、と言っているのと同じだ。無口な師匠らしい。
早速今の難しい仕事に手を貸してもらおう。
だが師匠は「それくらい自分で何とかせぇ」と言って腕を貸してはくれなかった。じゃあこの槌は一体…
「それ、振ってみぃ」
師匠に言われるがまま、槌を振るう。
槌からお金が落ちてきた。まるで打ち出の小槌だ。振れば振る程金が出てくる。これは凄い！
…が、俺は槌を振るうのを止めた。俺はこんな事で金を稼ぎたくない。
師匠を見るとニヤリと笑っていた。
「よぅ止めた。そのまま振りよったら槌から火が出てお前さんを焼きたてにするところだった。道具に頼るは最後の手段。お前の腕、俺が鍛えちゃる」
どうやら師匠は俺を試したようだ。