噛ませ犬ごはん

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俺がこのキッチンの王だ。
朝は目玉焼き、昼は焼きそば、夜はステーキ。休む暇もない。
夜の洗い物が終わり、やっと俺は忙しさから解放され、壁にかけられた。
「今日も作った作った」
「和洋中と引っ張りだこだね」
壁にかけられたヘラが、ヘラヘラいう。
「俺なしじゃ、ここの食はまわらないからな」
「おい、まただぜアイツ」
ヘラの視線の先では、主人がアイツに油を塗って、熱している。
「毎晚、オイルマッサージとはいい気なもんだぜ。現場にでろっての」
「それな」

ある日のことだった。
『あら、くっつくわ。寿命かしら』
屈辱の一言だった。
その晚、俺とアイツでそれぞれオムライスを作り、食べ比べが行われた。
「鉄のほうが本格的で美味いな。我慢してよく育てたね」
俺はただ使い勝手がよかっただけなの?
数日後、新たなテフロンがやってきた。
『今までお疲れ様でした』
主人の最後の言葉に、加工が剥がれるほど泣いた。
ファンタジー
公開:23/02/05 12:28
毎週ショートショートnote 噛ませ犬ごはん

そるとばたあ( 神奈川 )


☆そるとばたあの400字SSは、『ミュージシャンが曲を作るように物語を描く』をコンセプトとしております。
ことば遊びと文章のリズムにこだわり、音を体感できる物語に挑戦中です!


☆拙作のプレイリストを選んでいただきました!
気になられた方は、↓の過去作品も一緒に楽しんでいただければと思います!




【This is そるとばたあ selected by むう】

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