0
2

私は恋を知らない。
友人にそれとなく聞いた事はあるが実際に見たことはない。
だから私は「恋」は都市伝説の類なのだろうと考えていた。
そんなある日、友人からA子が恋患いだと聞いた。
私は思った。これはチャンスだ。恋の正体を確かめる事が出来ると。
私は鞄に急いで医療セットを詰め込み、患者の家に赴いた。
「A子君、調子はどうかね」
「なんだか、胸がドキドキします」
「ふむ、他には」
「気付くといつも、とある男性の姿を探しています」
「ふむ、なるほど、君の話を聞く限りだと、もしかすると君は気付かぬうちに麻薬を服用していたのかもしれないな。さしずめ、その男性は麻薬の売人と言った所だろう。だから今の君の症状は麻薬の効果が切れかけている時に起こる禁断症状に間違いない。この禁断症状は厄介な事に幻覚や依存性があるのだよ。まあ、安心したまえ。時間が経てば治るはずだ」
A子は何かを言いたげに私を見つめていた。
公開:23/02/08 08:19

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容