人生終了ボタン

死刑執行人の私は死刑囚の背中に手を伸ばす。
そこには人生終了ボタンがある。このボタン、私にしか見えない上、私にしか押せない。
私はそれを押す。
１分程度で死刑囚は動かなくなる。刑の執行が完了した。

次に刑期を終えた受刑者の脇腹に手を伸ばす。
そこには再起動のボタンがある。これも私にしか見えない上、私にしか押せない。
ボタンを押す。１分程度受刑者は動きを止め、再び１分かけて目を覚ます。
誤作動を起こしてしまった人生、今日からまた新しく始めるといい。

最後に私は自身のスリープモードのボタンを押した。
この方法でないと私は悪夢にうなされる。指一本で簡単に人の命を奪えるのだ。自分が恐ろしくてたまらない。
出来る事ならもう二度と目覚めたくない。だから一度だけ、自身の人生終了ボタンを押した事がある。
無駄だった。同僚が私の手を握り、私の指で全身のあらゆるボタンを押していた。
目覚めは最悪だったよ…