鬼は外、鬼の内

「鬼は外！福は内！」
今日は節分。俺は道行く人に豆をぶつけてはその反応をSNSにアップする。
批判が集中するもその分閲覧数がどんどん上がっていく。悪名は無名に勝る。炎上がなんぼのもんじゃい！
豆をぶつけられた相手は高所にいる俺に対し手も足も出ない。睨みつけるが関の山。
怒声なんてどこ吹く風。豆をぶつけ続ける。
３０分もすると豆もなくなった。そろそろ帰るか。

帰宅すると家の中に鬼がいた。
鬼は姿勢を正すと俺に頭を下げてきた。
『開放してくれて、ありがとう』
聞けばこの鬼、人の心の内にある負の感情の塊らしい。それを俺が豆をぶつける事で外に出られたんだとか。
へ～、どうでもいい。それより鬼をSNSにアップすればさらに再生数が稼げるぞ！カメラを起動させる。
『手伝います。こうすれば再生数はもっと稼げる』
鬼は俺の腕をもぎるとパンでも食べるように咀嚼する。
『人の肉を食う鬼。最高の素材でしょう？』