ぷかぷか

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「鈴木さん、『ぷかぷか』してるよ」
私は後輩の鈴木さんに声をかけた。

「えっ、やば、ほんとですかー」
そう言いながら彼女はデスクからマスクを取り出し口元を覆った。
「今日は合コンの予定入れてたのになー」と不服そうな声色の彼女に「それはタイミングが悪かったね」と声をかける。
「ほんとですよー。最近忙しかったから、周期がずれてきてるのを忘れてましたー。でも帰らないと死んじゃいますからねー」と彼女は心底嫌そうな顔をしながら次の海休暇の申請を入力していた。

陸に上がった人魚は、誰かに愛されなければ泡沫になってしまう。それを防ぐために、『ぷかぷか』してきたら海に帰り英気を養うのだ。

「私も早く誰かに愛されたいなあ」と鈴木さんは私の左手の薬指を見つめながら呟く。
「私は逆に海が恋しいよ」と言うと、「そしたら旦那さんをブスッと刺しちゃうしかないですよー」と、海の底から響くような声が返ってきた。
ファンタジー
公開:23/02/04 21:06

三木幹人

文章書くの苦手なんで少しでも上手くなりたくてはじめました。よろしくお願いします。

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