獣の足跡がつく青空

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突然、雲ひとつない真っ青な上空から「ドスンドスン」と地響きのような足音が聞こえてきた。
驚いて見上げると、空のあちらこちらに獣の足跡の形をした凹みがついているではないか。まったく姿は見えないが、巨大な獣が青空を駆け回っていることは間違いない。
案の定、姿なき獣と衝突した飛行機やヘリコプターが落下し、大騒ぎとなった。
姿なき獣が現れるのは決まって青空の日だった。けっして曇り空や雨空では現れない。
政府は、生物学者や気象学者を中心とした緊急対策チームを召集し、獣の正体を探ったが不明のままだ。
そんなある日、晴れ上がった青空で急に雷が起こると、見えない獣が姿を現した。どうも雷が発した電気に反応して、透明から実体が顕となったようだ。
こうして姿を現した獣を航空自衛隊が捕獲したが、忽然と消え去った。
それ以来、獣は現れなくなったが、原因は一向にわからずじまいで、まさに青天の霹靂のような出来事だった。
その他
公開:23/02/04 07:00
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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