たらりらりら

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昔、おばあちゃんは不思議な呪文を教えてくれた。それがたらりらりらだ。決して使ってはいけない。人生で一度だけ、本当に困ってどうしようもなくなった時に使いなさい。と言って、おばあちゃんは亡くなった。それから僕は、いざとなれば、たらりらりらがあると思えば、何でもできた。自然と怖くなかった。心強かった。おばあちゃんがいつも見守ってくれていると信じていた。でも大人になり、次第に僕は、たらりらりらは気休めで、本当は魔法なんてないんだと思うようになった。そう思うと、僕の人生は途端に上手くいかなくなった。もう嫌だ。何もかもが嫌になった。マンションの屋上にいき、身を投げる覚悟をした。そして最後に呟いた。
「たらりらりら」
そう言うと、おばあちゃんの笑顔が思い浮かび、声が聞こえた。
「大丈夫だよ。大丈夫だから。生きなさい」
僕は涙を流し、その場に座り込んだ。そして今も、たらりらりらは僕にとって、魔法の言葉だ。
公開:23/02/02 07:25

富本アキユ( 日本 )

カクヨムにも小説を投稿してます。
Twitterは@book_Akiyu

・SSG投稿作品1500作品突破

・作詞を担当
https://youtu.be/OtczLkK6-8c

・葉月のりこ様YouTubeチャンネル『ショートショート朗読ボックス』~ショートショートガーデンより~の動画内で江頭楓様より『睡眠旅人』を朗読して頂きました。

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・魔法のiらんど大賞2021小説大賞。大人恋愛部門「彼女の作り方」が予選通過

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ブラウン・シュガー
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