美しさの虜

魅せられる、とはよく言ったものだ。初めて彼女を目にしたその瞬間から、僕は恋に落ちた。
彼女は幽霊だった。交通事故に遭ったのだろう。首はあらぬ方向へと曲がっており、苦悶の表情を浮かべている。そんな事は関係ない。
僕は彼女の手を取った。ああ…なんて美しい手なんだ…
手だけじゃない。この足も…
血の通っていない透明感のある肌…生きている人間ではこうはいかない！
唇は自身の血で赤く染まり、目も赤黒く充血している。ああ…なんて美しい赤なんだ…人間の内に秘めたる本来の赤がそこにはあった。
僕は彼女に憑りついた。もう離さない。君は僕のものだ。
苦悶の表情に照れが混じる。凄く可憐だ…朱に染まる頬の美しさ…たまらない！
僕は彼女の美しさを多くの人に知ってもらおうと手足をインスタにアップした。世界が瞬く間に彼女の美の虜となる。
パーツモデルyuko。僕は彼女との出会いで幽霊専門のパーツモデル会社を立ち上げた。