駅の女

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 見られている。
 地下鉄のホーム。その男は私をじっと見ていた。
 目を合わせては駄目だ。見ないようにしているのに、男の視線が私の方を向いているのがわかる。
 私は逃げた。
 気付かないふりをしてでできるだけ自然に。
 だが男は追って来た。
 気が付くとホームの端まで来てしまっていた。周りには誰もいない。
 男が近づいて来る。
 どうしよう。
「君」
 男が声を掛けてきた。
「君の居場所はここではない。あるべき場所に戻るがいい」
 男は手を伸ばして、腕を掴もうとした。
「さあ成仏するんだ」
「嫌!」
 そう叫んで振り払った。男はバランスを崩して、線路に落ちそうになった。そこへ電車がやって来た。
 声にならない叫びが私から迸る。私じゃない! 私のせいじゃない!
私の……

 電車は何事もなく出発した。
 男の姿は跡形もなく消えていて、後に泣き叫ぶだけの女が一人残された。
 
 
 
ホラー
公開:23/01/27 18:25

堀真潮

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tamanegitarou1539@gmail.com

 

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