人生観覧車

婚約者を紹介したその日、僕は父と観覧車に乗った。
不思議な観覧車だ。グネグネと曲がりくねったレールを上下に進む。
窓の外に目を向けると遊園地を楽しむ親子連れに目を奪われた。
そこにいたのは幼い僕を連れて来てくれた両親だった。
「ここは人生観覧車。俺の人生観を観覧車に見立てたものだ。窓の外に流れるは俺の思い出の風景だぞ」
ゆっくりと観覧車は登っていく。
「お前の小学校入学、俺はワクワクしていた」
かと思えば下がっていく。
「思春期に入って俺を無視し始めた時は正直辛かった…」
山あり谷ありの人生とはよく言ったものだ。父の人生は緩やかに何度も上下を繰り返している。
そして今、観覧車は上へ上へと登っていく。
窓の外を見ると僕が婚約者を連れて来たシーンが流れている。
「今日という日が、嬉しくないわけないだろう？」
登り切ったところで観覧車の扉が開いた。
僕と父を下した観覧車は上へ上へと進んでいく。