雨模様、恋模様。

十年付き合っていた男に突然別れを告げられた。私は結婚も考えていたのに向こうはそれが重荷だったようだ。
雨の中、傘も差さずにさ迷い歩く。私はこれから、どうしたらいいんだろう…？
そんな茫然自失な私に彼は傘を差し出してくれた。己が濡れるのも厭わず、降りしきる雨から私を守ってくれた。
格好良くはない。ピエロみたく舌をべーっと出しておどけてみせる。その仕草に笑みが零れた。
彼の大きな目に私の心は掴まれた。
暫くして、私は彼と同棲を始めた。
彼もまた、私との結婚を考えてはくれない。彼は高齢で、私と二回り以上歳が離れている。世間からの目が厳しいと話す。私は気にしないのに…
私は彼の一本筋の通った骨のある姿と大人の風格が好きなのだから。
そんな彼と長い時間を過ごし、私も老婆と呼ばれる歳になりました。
私は今日も唐傘おばけの彼を手に外を歩きます。
やっと周りから「お似合いだ」と言われるようになりました。