退屈道場

道場に入ると作務衣に着替え、スマホを預けて食堂で夕食。修行仲間の数人と軽く挨拶。
食事を終えると各自の部屋に案内された。ビジネスホテル風の部屋。画面でテレビとネットが見られる。十時消灯。
朝、朝刊が入る。テレビだけでネットはつながらない。食堂で朝食のあと中庭を散歩した。散歩から戻ると部屋で昼食。これ以降は部屋にこもって個食だ。テレビが映らずラジオを聴く。夕刊を読む。翌朝、新聞は来ない。ラジオも鳴らない。人と話さず文字を読まず何も聴かない。情報遮断。
ベッドに仰向けになって考える。仕事や家族や友人のこと。学生時代や幼児に遡って遊んだこと叱られたこと。亡き父母や田舎の田園風景。ついに思い出も尽きて何も考えることがない。次の朝、ドアに挟まれたチラシ一枚。ありふれた健康食品の広告。豊かな広告コピー、タレント写真の新鮮さ。隅々までチラシを読んで半日を過ごす。
情報過多の脳を洗浄する修行は明日までだ。