奇人養成ギブス

私はいつまで経っても凡作しか書けない。そこで奇人養成ギブスというのを買ってきた。一般人は欲しがらないだろうが、私のような物書きとか芸術家などは人と違った感性を要求されるため必要なのである。
そのギブスをつけてみた。原稿用紙に向かって文章を書こうとしても書けなかった。パソコンを開いて文章を打ち込もうとしても同様だった。仕方なしに立ち上がると、足が勝手に動き外を散歩し始めた。
それまでの自分では決してやらなかった裏道を歩いて、怖そうな人に話しかけたりした。道端に座り込んで花に見惚れたり、いきなりでんぐり返しをやったりした。
またギブスの力は強いので、その力に抗って動こうとすると自然に体も鍛えられた。心身共に成長していくようだ。
私もいろいろな経験をしたので、これを生かそうとギブスを脱ぎ文章を書き始めた。
しかし凡作しか書けなかった。私の知性や感性が未熟なだけだったようだ。しかし体は鍛えられた。