ロウカでロウカ

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二十年前に倒産したまま廃墟となっている温泉旅館には、ある噂があった。
表玄関から大広間につながる廊下を渡りきると、一気に老化するという。つまり、ロウカでロウカだ。
ただのダジャレだと思っても、あえて廊下を渡ろうとする人間はほとんどいない。だが、ある若者グループが面白半分で温泉旅館に侵入した。
「あんなのただの噂だぜ」
「なんてことない、ただの廊下だ」
「怖くともなんともない」
そう騒いでいたのもつかの間で、大広間まで到達すると、彼らに突如として激しい耳鳴りが始まった。
頭蓋骨を突き抜ける不協和音と奇妙な電子音。シャウトするような叫び声。胸の奥からこみ上げる音を奏でたくなる衝動。
彼らは気が付いた。これは老化ではない。ロウカでロッカーになったのだ!
青春
公開:23/01/20 11:21

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