画家のスランプ

4
2

私は画家である。しかしスランプに陥っている。全然描けないのだ。
売れている頃は熱心なファンも何人かいて、売りに出すとそれなりの値で買ってくれた。
作品を出せれてないから当然だが、ファンどころか興味を示してくれる人もほとんどいなくなってしまった。
何か刺激を受ける体験をしてみよう。それで私の感性は甦るのではないか。
そうだ昔の文豪が書いていたように、夫を火事になった家に閉じ込めてその様子を描くというのはどうだろう。思いついたら、すごく名案に思えた。早速実行に移すことにした。
トリックを仕掛け、夫が火炙りになった様を見物した。私の手口が巧妙だったからか、警察も消防も特に不審感は抱かなかったようだ。
その光景を思い出し絵に描いてみた。しかし凡作となった。売りに出しても案の定売れなかった。
私は夫のことを嫌っていたから、刺戟的な光景を見ても精神浄化になっただけで、情念とならなかったのかもしれない。
その他
公開:23/01/19 21:14

ぴろわんこ

少し変わった、ブラックな話が好きです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容