夢の話

一昔前は手術を行う際、患者に「何か音楽聞かれますか？」と聞いていたものだ。
今では手術を行う際、患者に「何か夢でも見られますか？」と聞いている。
これも技術の発展だな。今や見る夢すらも人がコントロールできるようになった。
今、患者が見ている夢は病気が治り、外を元気に走り回っている夢。その夢を叶える為、私は今こうして手術を頑張っている。
…少し夢の中の患者が活発過ぎるな。全身の筋肉が運動中のものに近くなっている。
私は看護師に夢の中の患者を眠らせるよう指示する。患者が夢の中、布団に入りすやすやと眠り始めた。
…よし。少しずつ血流が緩やかになって来た。今のうちに進めるぞ。
夢をコントロールする事で肉体もコントロールし、手術を円滑に進める。これが今の技術だ。
手術中、好きな夢が見られるのなら、このまま失敗して死んでもいいと話す患者もいるがそれは大間違いだ。
何せ死んだら夢は叶えられないのだから。