夢の話

「お前と代わりたいよ」
これは魔法の言葉だ。こう呟けば、俺は夢の中でなりたいものへと変わる。
例えば、あの女性アイドルが飼っている猫。あいつと代わった時なんて最高だった。
あられもない姿が見れたし、抱きしめてもらえた。
とはいえ所詮は夢だ。見たものが間違いだった事も多々ある。それでも俺は夢を見る事をやめられなかった。
そんな俺だが実は彼女がいる。
その彼女が先日、ウチの冷蔵庫を見ては「この子凄く好き！愛してる！」なんて言ってきた。
家電マニアの彼女にはウチの冷蔵庫はたまらないらしい。
そんな冷蔵庫に俺は魔法の言葉を呟いた。
夢の中、俺は冷蔵庫になっていた。冷蔵庫となって、彼女の愛を受け止める。
ついでに俺の姿を探してみると、滅茶苦茶クールになっていた。
クールな俺が冷蔵庫の俺に近付く。
「人間の体っていいな。こいつは俺が貰う」
その日から、俺は冷蔵庫のままだ…悪夢は覚める気配が全くしない。