夢の話

最近、私の夢の中に炭鉱夫が現れる。
そりゃ、夢なんだから多少の違和感は受け入れられる。しかし、毎晩炭鉱夫が現れるとなると気味が悪い…
もしやこれが噂に聞く”夢男”という奴か？鳥肌が立つ。

案の定、今夜の夢にも炭鉱夫が現れた。大きなスコップでずっと掘り続けている。怖いけど、何を掘っているのか聞いてみよう。
「俺は今、お前さんの記憶を掘り下げているのさ」
記憶？
「そう。夢の世界は記憶の整理と呼ばれていてな。それに乗じて、お宝になるような記憶が出てこないか掘り起こしているってわけよ」
そうなんだ…
「それだけじゃないぜ。思い出したくない嫌な記憶を、俺らは記憶の奥底に埋めている。この掘った穴の奥底にな」
そう言って炭鉱夫が見せてきたのは私が中二病だった頃の思い出。それは是非とも埋めて下さい。
「あいよ。ついでに俺と話している今の記憶も埋めておくからな」

朝起きると、私は何も憶えていなかった。