夢の話

学校で”孵化するとなりたい自分になれる卵”が皆に配られた。
これを大切に育てると、卵が孵化する頃にはなりたい自分になっているそうだ。
卵を手にした瞬間、孵化したクラスメイトがいた。その子は今、なりたい自分になっているのだろう。羨ましい限りだ。
私はと言うと、なりたい自分と今の自分があまりにも違い過ぎる。だから卵が孵化する事は暫くなさそうだ。
もしかしたら、一生孵化しないかもしれない…
もういっそ割ってしまおうかな…なんて思った事もある。気が短い子や、なりたい自分になれなかった子は皆卵を割ったと話す。
でも私はそうしなかった。大切に、とまでは言わないが卵をちゃんと保管していた。

私の卵が孵化したのは学校で卵を貰った１５年後。それは忘れた頃に孵化した。
私はあの頃、ママみたいになりたい、と思っていた。
結婚し、子どもが出来た私はママになった。
卵はそんな私をずっと見守ってくれていたらしい。