たどりついたら、いつでも

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校庭の隅の茂みで、ファウルボールを探していて、健介君は不思議なものを見た。
野良猫が何かを狙っている。
昆虫かと思ったが、小さな人の形をしていて、足にケガをしているようだ。

健介君はとりあえず、猫を追い払った。
小さな妖精のようなそれは、彼に頭を下げ、言った。「たどり着いたら、いつでもダンス」
そしてどこかへ消えた。

その時から、健介君のいる高校の野球部は、地区大会で連勝を続けた。
試合で苦しい時、健介君には踊る妖精の姿が浮かんできた。
そして遂に、春の甲子園の出場が決まった!「信じられない快挙」と世間は沸いた。

さて、春の甲子園。1回戦に勝利し、波に乗る健介君たちの高校。
その日、球場から宿泊先のホテルに帰り、彼らが食堂に入ると、食卓の上で、妖精たちが踊っていた。そして消えた。

数日後、彼らの高校は2回戦で敗れてしまった。
この前の1回戦が、彼らの“たどりついた先”だったわけだ。
ファンタジー
公開:23/01/15 19:09
野球 妖精

tamaonion( 千葉 )

雑貨関連の仕事をしています。こだわりの生活雑貨、インテリア小物やおもしろステーショナリー、和めるガラクタなどが好きです。

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