隠し事はやめた

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「あの時、わたしを助けてくれたのは、あなたですよね?」
ルナの問いに、俺は苦笑して答える。
「……違うよ」
俺の言葉を聞いて、ルナの顔が曇った。
「じゃあ……やっぱり……」
悲しそうな顔をしているルナを見て、俺は心の中でため息をついた。全くこいつは、自分のことよりも他人のことを気遣うなんて本当にお人好しだ。
だけどそんなところが――
「いいや、俺だよ」
「えっ!?」
俺の言葉にルナは、驚いているようだった。まあ当然だろう。だってさっき否定したばかりなのだから。
「で、でも、あの時のことは、よく覚えていなくて……。それに、わたしを助けた人がどんな人だったのかも思い出せなくて……」
戸惑っている様子のルナに向かって、俺はニヤリと笑ってみせる。
「そりゃそうだろ。何しろ、俺の変装は完璧だったからな」
本当はスパイであることは、誰にも話さずに一生隠し通すつもりだった。だが、こいつには正直でいたい。
公開:23/01/15 08:25

富本アキユ( 日本 )

カクヨムにも小説を投稿してます。
Twitterは@book_Akiyu

・SSG投稿作品1500作品突破

・作詞を担当
https://youtu.be/OtczLkK6-8c

・葉月のりこ様YouTubeチャンネル『ショートショート朗読ボックス』~ショートショートガーデンより~の動画内で江頭楓様より『睡眠旅人』を朗読して頂きました。

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