福夢袋

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元旦の初売りで賑わうデパートの一角に、『福夢袋』のコーナーが設置されていた。
「いらっしゃい。夢見も一年の計は元旦にありですよ」
売り子の掛け声に惹かれ予約カウンターに並ぶ。激務がたたってか、年末は悪夢にうなされていた。福夢で心機一転するのも良いだろう。
「即売じゃなくて予約なんですね」
「お急ぎなら奥の仮眠室でも見られますが、せっかくの初夢ですから、おうちでゆっくりご覧なさい」
傍目にもよほど疲れて見えるのか。縁起物が並ぶ福夢リストから、干支にちなんで『卯』の夢を予約、早々に家路についた。

その夜の夢は、月面でうさぎが餅をついていた。
新年の鏡餅を製造中の様だ。楽しげに弾む影とリズミカルな杵の音に、重く沈んだ気持ちが軽くなった。
ふっくり重なる白い丸餅には、うさぎ謹製らしく耳と尻尾が生えていた。
お土産に一つもらい、六分の一の重力を飛び跳ねて帰る。うさぎ餅の頭で橙色の満月が光っていた。
ファンタジー
公開:23/01/09 17:43
月の音色 月の文学館 テーマ:夢の話

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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