文芸祖母

いつも本ばかり読んでいる祖母は、とても物知りだ。そんなに本が面白いのだろうかと思い、俺は小さい頃から疑問に思っていた。本を読むよりも外で遊ぶ方が楽しいのにと。だが、大学生になった頃、本を読むのもいいかもしれないと思うようになって祖母に尋ねた。
「ねえ、お婆ちゃんが今まで読んだ中で一番面白かった本って何？」
「うーん、難しい質問だね。沢山あってひとつに選ぶのが難しいね。あ、でもあれは良いね。宮沢賢治の銀河鉄道の夜」
「あー、聞いたことある。俺も読んでみようかな」
「じゃあ本をあげるよ」
そう言って祖母から銀河鉄道の夜を貰い、じっくりと読んだ。その世界観に俺は、感動した。本ってこんなに面白いんだ。それから俺は、今まで本を読まなかった時間を後悔し、今までの分を取り返すかのように読書に夢中になった。
「まあこれが俺の本を好きになった理由だよ」
これを今、俺は本を読む理由を聞かれた孫に話している。