盗掘屋

盗掘を生業にしている私は今日も他人の過去を勝手に掘り返す。
私の手並みは鮮やかで、相手は過去を掘り返されているなんて思ってもみないだろう。気付かれた事は一度もない。
私が何を盗んでいるのかって？相手の恥ずかしい過去だよ。
クレジットカード番号や通帳・印鑑の隠し場所なんかを掘り返したところで、それを手にすれば捕まってしまう。だが、恥ずかしい過去ならいくら手にしたところで捕まる事はない。
同業者の中には弱みを握って、相手を辱める行為を楽しむ奴もいる。私は違う。
私は掘り返した恥ずかしい過去を面白おかしくしては本にしている。盗掘＆執筆。これが私の本業だ。
それに私は盗掘した後、しっかり綺麗に埋め立てている。そうするとどうなるか。
なんと、恥ずかしい過去が「そんな事もあったな…」という大人の余裕へと変わる。
この話、身に覚えがあるという貴方。
もしかしたら、どこかで私と会っているかもしれませんね。